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みんなを癒し事務所を守る ルーチェちゃん
兵庫県西宮市、閑静な住宅街に司法書士 吉岡周三事務所は位置する。この地に根をおろして12年、多種多様な紛争に挑んでいる。司法書士と聞いて、登記の書類を作成する代書屋を思い浮かべる人も多いだろうが、今や、司法書士は地域の法律家として認知されている。そのきっかけは司法制度改革。これにより、司法書士のあり方は大きく変わった。

改正司法書士法の施行で明記されたのは「成年後見業務」と「財産管理業務」。財産管理とは、単に書類を作成するだけではなく実際の財産の管理を行う業務である。さらに「簡易裁判所での訴訟代理権」も認められ裁判への関わり方が変わった。これまでの訴状や答弁書の作成業務に加え、裁判所の法廷に司法書士が立ち、本人の代理人として答弁ができるようになったのである。つまり、登記などの手続きが主体だった業務は、裁判実務にまで拡大。これが、地域の人たちとの距離を一気に縮めることになった。

司法書士の機能が拡大すると、債務整理への積極的なPRや、登記料の安さを売りにする事務所が目立ちはじめる。しかし、吉岡先生は一貫して街の法律家を守り抜き、価格の競争もしない。法人顧客の会社設立に関われば、決算の時期には総会の案内を出し、たとえ一人の会社であってもやらなくてはならないこと、法律が変わったことなどをお知らせする。長くその会社と関わることを念頭におき、回収できない売掛金、社員とのトラブルなど、紛争になる前に声をかけてもらえる存在を目指している。

冒頭、弁護士との領域が近づいてきていると説明したが、裁判になるものは弁護士、裁判にならないよう糸口を見つけるのが司法書士。弁護士は敷居が高いだけに、泣き寝入りする会社も多い。だからこそ、司法書士の活躍の場がある。大学病院が弁護士で、町医者が司法書士といえば、わかりやすいだろうか。かかりつけの医者に定期検診を受けていれば、異変をいち早く発見でき、末期で大学病院に駆け込むことも防げるはずだ。吉岡先生が地域密着にこだわる理由は、ここにある。
「会社設立の登記は、単なる手続きではなく、どんな会社にしたいのか、企業理念を盛り込むなど、創業者の想いや目的にあった内容にしなくてはならない。大事なのは、登記に至るまでの過程なのです。
遺産分割協議であっても、相続分を受け取らない人については、本当にそれでいいのか、協議者に伺う。親など相続のなかに強い人がいると発言しにくく、意図していない協議書でも判を押すケースがありますから。不動産でも誰が相続すれば良いのかを含めて考える。事業承継も、共有ではなく単独で所有し、代償分割でお渡しするとか、事業がスムーズに継承できる形を考え、提案します」

そんな吉岡先生がこだわっているのは、本人確認。登記のお手伝いをした会社が、県警から事情聴取を受けたとき、登記申請書に書く内容だけでなく会社全体の実態をしっかり把握していなかったために、トラブル解決の助言ができなかった。
「経営者と直接会って話を聞いていれば、気づくことができたかも知れない・・・」
この経験から、申請書をつくるための内容だけを把握するのではなく、会社の抱えている問題や今後の方針などを聞くようになった。法務局は書類の内容しか判断しない。だからこそ、人や意思の確認をし、紛争を予防することが司法書士の仕事の本質だと語る。
8年前、あらたな顔として加わったのは、長男の吉岡大地先生。法学部に進学しながら、父親が司法書士の試験を受けていることをあまり認識しておらず、弁護士よりもっと身近な存在で地域の人のトラブルを解決する司法書士の資格を知り、その道に進んだという。

「最初に受けたのは、借金で生活が成り立たない人の相談でした。債権者と交渉しながら、なんとか一件落着したのですが、家賃も払えない状況だった依頼者を救うことができるのか、司法書士の責任の重さをはじめて感じたことを覚えています」

形式的に考えれば方法はあるが、本当にその人のためになるのか・・・その判断が難しかった。今では、成年後見人に就任して、判断能力のない人にかわって、手続きをする。すべて自分の判断だけに、悩むことも多い。そんなときは、父親のアドバイスが特効薬となる。
「まわりを見渡すと、不動産登記などに特化している事務所が多いですね。その方が効率的かもしれませんが、私どもは、地域のために何でもお引き受けする。だから、常に違う、新しいものが出てくるんです」
現在31歳、特化しない環境が、幅広く、高い経験値となって厚みを増している。
西宮に事務所を立ち上げるまで、職を転々としたという吉岡先生。弁護士を目指したが、当時、子供も生まれ、試験勉強よりお金を稼がなければと、ついた営業職では30代で1千万を超える報酬。しかし、「分不相応なお金をもらっては、自分が駄目になる」と、きっぱりやめた。それが良かった。行政書士として働くなか、生涯の仕事にしたいと出会ったのが司法書士。十年かかって、手にした司法書士のバッヂ。現在は大地先生と二人三脚だ。依頼内容は分担しているが、情報共有をしていることで、どちらかに何があっても対応可能なのが強み。年齢が離れている分、考え方も違う。それを摺り合わせることで、より、効果的な解決ができる。

「これまで、嬉しいことばかりでした。当たり前のことをしているだけなのですが、皆さんに喜んでいただける。そんな幸せなことはありません」

人と深く関わり、依頼人にあったかたちで解決をする。そのスタイルは、決して、報酬が倍になるわけではない。しかし、一枚の登記簿には、その人の未来を考えた文面が綴られているのである。

取材:2014年 7月24日

司法書士 行政書士 吉岡周三事務所ホームページ